三好シュターク綾のボスニア通信 6
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ボスニアで我が家に帰る方法 2.我が家が我が家であること 私事ですが、近頃ボスニア通信やDIY本の編集など、定期的かつ頻繁に締め切りがやってくる執筆活動が日々の課題の大半を占めています。これまで、お役所に提出する硬めの事業報告書ばかり書いてきましたので、それとは違った角度から「(好奇心の赴くままに)リサーチ」し「書く」楽しさを実感中です。同時に、締め切りが迫りくる恐ろしいほどの速さと、決して容易ではない「書き続ける」行為を体験しています。毎日絶え間なく執筆する私達の師匠に、改めて敬意の念を抱きます。 さて、我が家への帰還を阻む民族・法律・政治・経済などの諸事情に関して、更に掘り下げてみましょう。とても基本的なことに、我が家が我が家であることを証明するための「登記」があります。ボスニアでは、1880年代にオーストリア・ハンガリー帝国より取り入れられた「二重登記システム」が原型となっています。これは、広さや所在地など家の基本データを示すcadastre registres「地籍登記簿」と、家の法的所有者を示すproperty books「所有権登録簿」からなります。 このシステムに基づき、ずさんな情報管理体制のもと、一軒の住宅に対して二箇所の異なった事務所が管轄しているため、所有者の氏名を含む登録内容が二つの登記簿で一致しないなど、大きな問題を引き起こしています。また、第二次世界大戦中に30%、最近の紛争では最高20%もの所有権登録簿が消失したと言われています。しかし、消失した、または誤ったデータを訂正したり、新たに住宅を登記する場合にかかる15%の税金を避けるため、多くの人々が正確な住宅登記を行っていないのが現状です。この結果、人々が我が家であると認識している住宅が、法律的には大きな勘違いであるという現象が起こっています。事態の深刻さは、200億円といわれる、莫大なシステムとシステム管理改善にかかる費用を見ても明らかでしょう。
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