オープン・テック・ハウス#3 
 漁師の家 F邸
 静岡県賀茂郡
掲載雑誌:GA HOUSES 77

 




アルミ製照明シェード
「クリップライト」




グライダーのような家を設計した
石山修武
『 is 』 連載 KEIMO 戦争最終回 2002/88 号より

 この原稿は伊豆で書いている。伊豆西海岸の小さな漁港安良里で書いている。安良里には友人の漁師がいて、その男のアパートの一室だ。盆の入りの某日。賀茂村安良里は夏の光が溢れ返り、人の姿は無い。まるで仏壇に踏み迷ったような静けさだ。
 部屋の天井にはでっかいグライダーの模型が吊るしてある。小さなプロペラ付きの奴。男が高校生の時作ったものらしい。私と言えば今日は男の家の新築の地鎮祭に来たのだ。部屋には沢山のモンスターが溢れ返っている。ミッキーマウスの時計。ピカチューの群れ。モンスター達がびっしりつまった壁掛けだってある。鉄骨二階建てのアパートの一室は明るく、いかにも平安なのだけれど、魔物が棲んでいる気配がある。
 男がこんなデッカイ、グライダーの模型を作っていたのを知らなかった。
それで私は男の家にと思って、グライダーのような家を設計した。因果を知らずに因果を設計していたのだ。私の頭の中に生まれていた男の家のイメージは私が作り出したものだと考えていた。いかにも軽々としたグライダーみたいな屋根を持つ家の姿は、私が考え出したものとばかり考えていた。私の自力だとばかり信じ込んでいた。男の前半生は海に明け船に暮れていたんだから、だから後半生は空に浮かせてやりたいと考えた。それでグライダーだったのに。私は知りもしないで男の現実をなぞっただけだったのだ。




03 年 2 月の工事現場


02 年 12 月 22 日上棟式


03 年 6 月竣工
\28,500,000.- (除設備)
60.3 坪

オープン・テック・ハウス

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