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地勢について

 如何なる場所であっても、その土地なりの特徴というものを持ち合わせている。それを地勢と言う。建築家は特定の土地の地勢を理解して、その場所に最適な建築の形を考え出そうとする。建築が一品物になるのは、そうした特定の土地と建築の深いエスキスから得られた、数少ない結果の一つだからである。  S邸は強い地勢をもった場所に建てられる。森を一つの具体的な場として捉え、抽出したアナロジーを建築のデザイン、つまりファサードの構造ブレースとして表現しようとしている。
 石井 孝幸


 五月にオープンハウスを予定している前橋のI邸である。この住宅のデザインの考え方を明確にわかりやすく理解するために、その成り立ちをアニメーションとして考えてみた。
 まず、四角い箱が土地と接するところからデザインが始まった。土地との関係からデザインを発展させていく方法、クライアントが大工さんであるという事。それらを軸にI邸のデザインは展開していった。
 軽井沢のS邸は、小高い丘の上に建っている。遠方に望める北の浅間山、西の北アルプス山脈。I邸よりも地勢(※ 1 上記参照 )のつよい土地であるから、土地と箱が接する時に生じるギャップに重点をおいてデザインを展開していけると考えた。それに加え、木々を伐採した事も土地との関係性から生じた出来事であるから、森のアナロジーとして表面のブレースに表現している。そして屋根の傾きは丘の頂上から望める山々の景観を確保するためのデザインとした。これらは一貫して土地と箱との関係性からデザインを展開していく方法をとっている。
 石井 孝幸



 埼玉県・指扇のA邸は、農地転用にも因るのだろうが四角でなかった。四角形の一つの角が少しばかり飛び出した形をしている。だがそれは、その地に絡む諸々の事情で生まれたものである。区画整理された四角い土地はそういったものを削ぎ落とした結果だ。A邸の敷地のような一隅にある三角形は切られ、変形とされる敷地は合理的とされる形状に修正されてきた。
 A邸の設計はこの土地に、住むための箱?器?をのせる事から始まった。土地の形状・傾斜といった現実(ドキュメント)が生み出した建築である。
 安藤由紀子

「ドキュメントの切断面」について

 B邸では様々な事情によって、3階建ての建物は2階との間でぶつ切りにされた。つまり外からの力によって建物がそっくりそのままカットされたのである。しかしその切断面にはクライアントの並々ならぬ家作りに対する思いが凝縮されており、それ故に撤収された3階部分には「いつか建ててやる」といったクライアントの夢が込められたコンテナが乗せられる。B邸はクライアントの家作りドキュメントの断面が外力によって露にされた、いわば他力の建築である。
 渡邊大志

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