RHYTHM FREAKS

RAVE ON
ecstasy

Ultimate Dance Experience

Answer to the Kiiko's Free Comment[1/20/97]
FRI JAN 24 1997
GARDEN

「こつはおどりつづけることよ」

5年前、イギリスのアンダーグラウンドは大変なことになっていた。それは日本にいて想像できるようなものでは決してなかった。
80年代末から違法なオーガナイザーがウェアハウスで始めたダンスパーティーは、いわゆるクラブシーンとは全く違う文脈で異常に拡大していった。それらは「レイヴ」と呼ばれ、アンダーグラウンドに、しかし大々的に行われていた。週末には何十万という若者がどこかのレイヴに出掛けているといわれていた。
ヒップホップはあったけど、ダンスミュージックと言えばディーライトやクリスタルウォーターぐらいしか知らなかった、(ましてやジュリアナなんてサイテーだった)ワタシは、しかし唐突に出会ってしまった、それに。
それは完璧だった。
クリスマス前の週末、在ロンドン知人に「面白いモンがあんだけど、興味あったら行かない?」と誘われ、まあ面白いならいってみるか程度の気持ちで出掛けた。「あたりはずれあるんだけど、ここはコンスタントにいい感じだから」と決めたヴェニューへ。ミニキャブを降りる。12時を廻った真っ暗な通りにベースのうなりが聞こえてくる。入口で値段交渉して、セキュリティーチェックを受け、小さなドアをくぐった。
ブッとんだ。
物凄い低音と早いビート。ストロボとレーザー。スモークの光の中で満員の人が物凄い勢いで踊っている。ヤバイくらい楽しそうに。
急いでフロアを横切り、奥のクロークにジャケットを預ける。不思議と踊っている人にはぶつからない。すっと道が出来る。フロアに戻る。自然と居場所が決まる。
ベースは身体を突き抜けて揺れる。スネアとハイハットの16のリズムが直接頭に入ってくる。薄明るいスモークの中で音に身を任すとハードなリズムの上に心地よいメロディーが漂って聞こえてくる。不意にスモークが晴れる。踊る人、人、人。一人一人ハッキリ見える。みんながすさまじい速さで揺れている。フロアがバウンドし始める。
身体が音に融けだす。手足はどんどん動く。跳ねる。汗だく。何度もまわりが見える。フロア全体が一体となってハードに踊ってる。踊る。踊る。ひたすら踊った気がする。気付いたら終わっていた。
爽快だった。一生踊っていたい気がした。

イギリスのレイヴシーンは非常によくできていた。
一晩中踊り続けるためだけに作られたレイヴのための音ははその頃「ハードコアハウス」と呼ばれ、イギリス独自の音楽シーンを形成していた。事実、アメリカや日本、大陸ヨーロッパですらイギリスの音はあまり聞くことはなかった。殆どのレコードは小さなインディレーベルから1000枚ほど出されるものばかり。しかしワケのワカラン真っ白なレーベルにこそ、名曲がたくさんあった。
新曲は先ず海賊放送で流される。1日中ハードコアしか流さない違法ラジオ。どんどん新しいモノが掛けられる。いい曲はここでチェックする。
気がつけば町の小さなレコード屋はみんなハードコア専門で、店にはいると店員が次々レコードを掛けている。ラジオでチェックした曲がかかると、群がっている客が一斉に「 I TAKE IT! 」と手を挙げる。奥からレコードが運ばれてきてあっという間に売り切れる。
週末にどこでどんなパーティーがあるかは、そういうレコード屋のフライヤーで情報を集める。殆どのオーガナイザーが決まったハコを持たず、郊外のウェアハウス、スポーツセンター、テント、どんな場所でも会場にしていた。フライヤーにはミーティングポイントが記される。日が暮れたら着替えのTシャツをポケットに詰めて出掛ける。パーティーには車で行くのが一番だ。大きなパーティーほどミーティングポイントから何カ所も移動させられるからだ。カーステレオからはパイレーツラジオのハードコアハウス。次第に盛り上がる気分。
ヴェニューに欠かせないのは先ず強力な音。積み上げられたウーファー。必ずあるのはブラックライトとストロボ、スモーク。レーザーなどのヴィジュアル兵器。蛍光バックドロップ。どのパーティーも最高のモノをそろえようとする。数百人の小さなモノから数万人のモノまで、オーガナイザーによってそれぞれが独自の雰囲気を持っている。
フロアのハードコアレイヴァー達は当時はまだ白人中心。しかし底抜けにフレンドリー。レイヴの魅力はここにある。見ず知らずの東洋人に「今日は最高だね」と声を掛けてくる。疲れて座っていると「タバコ吸うかい」「水廻ってきたよ」。踊っていて目が合うと互いにハグ。その場を共有した全ての人間と一緒に楽しもうとする。DJは何気なくしかし最高のプレイを要求される。ロンドンのトップDJ達はまさにウィザード。フロアをどんどん一つにまとめていく。決してとぎれない流れ。何よりも踊り続けることで一つの場所が完成されていく。その場の全員がそれをよくわかっていて、そして最高の場面ができあがる。あとはいつまででも踊れる。永遠に終わらない瞬間。

「Heaven on Earth」まさに地上の天国であった。

日が昇ってパーティが終わっても、駐車場でパイレーツラジオを掛けて踊っているヤツがいる。そういえば夜中にキックしまくってたヤツだ。向こうもこっちを見て笑いかける。一晩同じ場で踊れば気持ちは通じている。ナゼか解り合ってしまうのだ。帰っていくどの顔もお互いを解り合っている。本当にピースな時間が流れる。

あとで聞いたことだが、ワタシが最初に出会ったそれは大きなモノではなかったけど、まれにみる最高のパーティーだったらしい。ハメられた。ハマってしまった。

イギリスのシーンはダークサイド、ジャングルと、当時のような手放しで楽しかったモノとは違うモノになっていって、でも最近のDRUM'N BASSはまたあの頃の感じを少し取り戻しているような気がする。RHYTHM FREAKSはその気持ちを受け継いだパーティーなのでよいモノにしてもらいたい。何よりも踊りに来るフリーク達が楽しむことで。
KIIKO-SANも、もっと夜遊びして下さい。

PEACE A LOT,
GARDEN-E


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