「あいさつ」
石山修武
2002年8月19日台北国際会議中心での鈴木博之氏講演「 Chinese Sense of Architecture 」に際し


 今日、ここで二人の友人を御紹介できることを大変嬉しく思います。一人は中国人、一人は日本人です。  李租原に会ったのは二〇年前のここ台北でした。伊東豊雄や山本理顕、今は亡き毛綱モン太等当時若かった日本人建築家達と来台いたしました。台湾の若い建築家達と共催の展覧会ができないかと考えたのです。その時台北で我々と議論をした中心的人物がCYLEE(李祖原)でした。それから二〇年間、御承知のようにCYLEEの大きくなり方は建築も人間も驚くべきものがあります。日本人の建築家には彼のような存在はいません。民族伝統を背負って立つ存在は今のところ居ません。私はCYLEEをチャイニーズ・ロマンティシズムの建築家として眺めてきました。北欧フィンランドにはナショナル・ロマンティシズムの伝統があります。そこからアルヴァ・アールトという巨匠が生まれました。姿形は違いますが、アメリカのフランク・ロイド・ライトがそういう歴史的背景を持っていました。
 李祖原の未来は実にスリリングで興味深いものがあります。彼の存在はアメリカナイゼーションというグローバライゼーションが進む中で、より強く大きなものになるでしょう。

   鈴木博之教授とは、これも三〇数年の友人です。東京大学と早稲田大学という対比的な学校にお互い属しておりますが、それを超えた友人として、建築に関する考えを鍛え合ってきました。彼は今日本で最も権威ある近・現代の建築に関する理論家であり、歴史家であります。しかし、彼は事実を整理する。いわゆる歴史家ではありません。建築家と同様に、いやそれ以上の意志を持って建築の未来を暗示する役割をになってきました。李祖原と似たところがあって、彼は同時代から孤立する事を恐れません。予言的な歴史家であるのです。
 鈴木博之教授にアジアの近・現代建築について論じてもらいたいというのは長年の夢でした。今回の講演がその始まりになればと思っております。 

詳しくは世田谷村日記八月一九日〜二一日をご覧ください

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