伊豆西海岸・松崎町の計画

まちづくり支援センター
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スタジオ GAYA

活動日誌

2014.06

0 松崎町を訪れての短い所感

[2014/06/09]

2014年6月6-7日に静岡県伊豆半島の西部に位置する松崎町を訪れた。
スタジオGAYA内でまだ本格的な議論、方針立てをする前ではあるが、町へ行ってみて考えたことを言葉にしてみたいと思う。
東京から松崎町へは東名高速を沼津で降りて三島を経由して南下しうねる山道を進む。(2014年春より伊豆縦貫道が一部整備され、移動時間はかなり早まった)
松崎町は現在人口約7,000人の町である。中心部である松崎漁港近くの中丁、浜丁あたりは「街」ではなく「町」と呼ぶにふさわしいくらいの大きさの印象であった。車で移動せずとも歩いて一周できてしまうくらいの町の広がりである。案内をしてくれたこの町に住む森秀巳さんが、曲がり角を曲がるたびに町の知り合いの誰かを見つけて挨拶を交わしているのが特に印象に残った。
そんな町の中にナマコ壁と瓦葺きの民家や蔵がバラバラと点在している。ナマコ壁のある家の角を曲がるとまた別のナマコ壁が向こうに見える、といったくらいの距離感である。ナマコ壁とは、平瓦を壁面に貼って目地にナマコのようにボテッと膨らんだ漆喰が塗られている壁である。柔らかい形であるが防火・防水にも優れ、潮風が強いこの町独自の風景である。
その中で特に長いナマコ壁が続いているのが江戸時代末期に建てられた近藤平三郎生家である。(写真に写る右端の民家。)現在その子孫の近藤二郎氏が住まわれている。
その隣に建つ特徴的なゲートと色ガラスが目玉のように付いた観光協会の建物は80年代にダムダン空間工作所が設計を行ったものである。さらに隣にはかつて町の銀行が入っていたという。ゲートの奥には古くからの近藤家の庭と、建築史家・鈴木博之氏が90年代にデザインした会所がある(写真の中心部の奥にも小さく写り込んでいる)。けれども写真に写るそれらの建物は、何処か気取らない素朴な一体感に満ちている。写真には、大昔より町を見守る後ろの牛原山も含めてさまざまな時間が入り込んでいる。自然の中に人が住み、人が集まり、家が段々と並んでいったその風景を写し込んでいるようにも思う。もちろん正確には同じ土地で何度も家は建て替えられ、町は点滅するように更新しているはずであるが、この写真に写った町の風景は、新たに建つ家がその隣の家の何がしかを引き継ぎながら隣に出現してきたように感じられる。
松崎町は静かな町である。ナマコ壁をはじめとする古民家は次第に姿を消していっているようだが、今回感じた町の一体感は、景観という眼に見える共通する要素だけではない、共有される何かが脈絡を今も受け継がれているのではいかと強く感じた。松崎町を歩き、町の人びとに会ってみての感想である。

2014年6月9日 佐藤研吾