自業自得大明王と僧侶
パガン

 Xがパガンに旅をしたのには、二つの理由があった。
 一つは、今はこれもまた、Y同様に自力で自業自得大明王と変身した新聞記者の強いすすめがあったこと。二つは、カンボジアの首都プノンペンのウナロム寺院の僧侶に、「メコン河瞑想の小屋計画」のあることを知らされていたこと。
 二つの理由が作り出す世界は、いずれ別の章で詳細に物語りたい。今は簡単に述べてさておく。

 自業自得大明王は、パガンのピラミッド群を見ないで南伝仏教文化の粋を語ることはできない、とXに教えた。そしてウナロム寺院の僧侶は、メコン河の多くの精霊たちの棲家だろうそこは、とこれも暗示したのだ。カンボジア仏教のセンターであるウナロム寺院は、メコン河とトンレサップ河の合流点近くに在る。メコン河を眺め暮らし、メコンからの風に身体をさらし続けた僧侶は、メコン河に棲む大魚ならぬ、メコンに龍神の在るのを本能的によく知っていた。ウナロム寺院での長い僧侶生活を経て、僧侶はメコンデルタに農場をつくったりもしていた。その僧侶の東南アジアでの生活のまとめのようなイマジネーションが作り出したのが、「メコン河瞑想の小屋計画」だ。

 物語りたい人Xが、はるばるパガンにやってきたのは、「瞑想の小屋計画」の土地検分が目的であった。

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