第五便
二十五年前、豊橋の川合健二さんに教えられながら住宅用エンジンの研究をしていまし
た。一五00CCの水冷ディーゼルエンジンをベースに住宅に必要なエネルギーを全て
自分で生み出してしまおうという計画でした。
時代は巡ります。科学技術の進歩は自然エネルギーの高度な利用こそ地球規模での環
境保全、そして人間生活のバランスを保つのに有効な事を教えます。風力太陽熱利用、
ゴミ問題への対応等を中心のテーマに据えた自給自足型住宅の初歩段階の完成が間近
です。この考えは住宅だけにとどまらず、それぞれの地域の特性に合った環境の構造と、
人間の生活の関係を暗示することになる筈です。いささか大きく出ますが、それなりの
モノがあります。お待ちください。
森正洋さんの食器を扱ってみたい。永年の夢でした。変わらぬモノを作り続ける人間を
信用したいと思います。森さんはまさにその事を絵に描いたような人物です。
モダーンデザインの原点、役に立つ美しさを備えたモノを作り統けてきました。
九州嬉野を活動の拠点にしながら、焼物にありがちな手びねりの骨董趣味、手工芸の嫌
味に堕すことなく、何十年もモダーンデザインの筋を通してこられました。沢山の受賞
歴がありますが、それが勲章や肩書としてブラ下がる事の無い、稀有な人間です。照れ
ずに言えば、ホトホト好きな人物なのであります。好きな人がワルイモノを作る筈があ
りません。
森さんは言います。「ドンブリの良さが忘れられている、だからドンブリから始めよう。
それに平形めし茶碗から使ってもらおうか。」どんぶりは二つから、めし茶碗は五点セッ
トで使って下さい。組合せの妙も大事です。森さんが自身で組み合わせ、いくつかの世界
を作ってくれました。ここにはモダーンデザインと生活学との幸せな出会いがあります。
青森県佐井村のひばを忘れてもらっては困ります。料理にはまな板が必要です。寸法に
工夫をこらしたひばのまな板を作ってもらいました。お試しください。
箸もおすすめしたい。沖縄県石垣島特産イスノキから作り出したモノです。その固さと
感触に独特なものがあります。
さて、伊豆半島西海岸賀茂村に安良里港があります。天然の良港です。かっては漁港と
して栄えました。今でも何隻かの漁船が頑張っています。その一つ第二十一豊幸丸を御
紹介します。友人の藤井晴正が乗り組んでいます。あだ名をハンマと言います。良い男
です。そのハンマの船が獲る魚のうち、カツオをお分けします。良いカツオが獲れたら、
直接豊幸丸から皆さんにお届けしようと計画しています。ただし五月下旬くらいとしか
時期を約束できません。勝手な言い草ですが聞いて下さい。果報は寝て待てとノンビリ
して下さる方がいれば予約して下さい。飛び切りの旬のカツオを第二十一豊幸丸のハン
マからお届けします。
商品が少しずつ揃ってきました。ズラリと全部、忘れないで下さい。オリーブ茶も。
一九九五年 春 町づくり支援センター 石山修武