第七便
変だった今年も暮れます。町づくり支援センターの活動も三年目になろうとしています。非力を痛感して、天を仰ぐ日々ですが、あきらめも後悔も無しに進みたいと思います。支援センターは、良い事や良いモノを作り出しているのに、それを世間が知らぬママなのを歯がゆく思う人間たちの集まりです。弱い勢力に何とか頑張ってもらいたい気分を色濃く持ち続けています。勝ち馬に我先に乗る器用さの持合せがありません。マ、負け惜しみが強いだけだと言えなくもありませんが。
それはサテおき、強くない人たちの最右翼に、体のハンディを背負った人たちがいます。いわゆる身体障害者と呼ばれる人たちです。実ワ、支援センターのスタッフにも居ます。勿論、車椅子の利用者です。丹羽太一君と言います。
いずれ、支援センターの活動が軌道に乗り始めたら、丹羽君を中心に、ハンディキャップの人々のまちづくりを推進していく部門を作ろうと計画していました。しかし、軌道に乗るのを待っていたらいつ始められるのか予測もつきません。考えた事を始められない事くらい辛く、空しい事はありません。暗い夜道に灯りを持たぬママに、それでも歩けない事もあるまい、つまずいたらその時考えようと腹をくくりました。それで支援センターは丹羽君の仲間たちのための活動を開始してしまう事にしました。まずは仲間づくりから始めます。丹羽君の呼びかけに耳を傾けて下さい。
神戸の山田孝雄さんから、御紹介がありました。なにしろ良いナベがあって、使ってみたらって。
送っていただきました、そのナベを。一目で、コレワ良いモノだとわかるクライのスゴイナベです。神戸・東灘区の懐石料理店「嵐山」店主藤富夫さんのオリジナルで、鉄の特質をトコトン生かしている、生きてる金物みたいな奴です。何でも呑み込んで、手ぐすね引いて料埋してヤルの顔付をしています。言葉だけではうまく伝えられませんので絵をご覧下さい。
伊豆西海岸、松崎町のオリーブ茶販売から出発した支援センターですが、今回は、その松崎町から希代のソバをお届けしたいと思います。
松崎町伏倉、人家もまばらな山合いに、小さなソバ打ちの店があります。小林興一さんの店「小邨(こむら)」です。小林さんは昭和23年生まれ、故郷松崎へはUターン組の一人です。縁があって昭和62年より、あの「翁」の高橋邦弘氏に弟子入りし、その直弟子になりました。腕も上げ、小邨は仲々の店になりました。今では遠くから客が訪ねてくる様にもなりました。いつか、ある日と考えてはいたのですが、ようやく御本人もそれ程恥ずかしくないモノが作れるようになりましたと言ってくれます。邪道を覚悟で、その小林さんのソバをクール宅急便でお届けしたいと考えました。十二月の十五日と二十二日に発送しますので、どちらかの日にちを指定してお知らせください。
青森県西津軽郡鯵ケ沢町の、見事なリンゴジュースを、新しくおすすめします。加工の過程を極力小さくし、少量生産だからこそできる味、これ以上はナシの自然なジュースです。独自な価値を望む人にそれを手渡していけたら、の当センターの考えにピッタリの品物です。
再び、九州・伊万里の菓子「香り菓」をおすすめいたします。オリジナルの伊万里焼の器が喜ばれています。ようやく森正洋さんの食器の価値もわかっていただけるようになりました。良い物を知っていただくのは時間がかかります。
少しずつセンターオリジナルの商品もそろってきました。
年の暮ですから、まとめて知人、友人におすすめ下されば幸いです。
来年には、東京・千駄ケ谷に小さな支援センター展示コーナーを設置いたします。ご期待下さい。
末筆になりましたが、今年はお世話になりました。ヨチヨチ歩きのセンターに力をいただいて本当に有難うを申し上げます。
また、早々と、支援センターより、良いお年を。新年もよろしくと、お願いいたします。
一九九五年 冬 町づくり支援センター 石山修武