まちづくり支援センター

第十四便


ご挨拶・十四

カンボジヤの政変も一段落したようで、プノンペンの「ひろしまハウス」建設が再び動き始めます。皆さんに買っていただいた絵葉書代の五十万円をウナローム寺院の渋井さんに送ります。引き続き絵葉書、その他の購入をお願いいたします。
又、四月中旬より広島市で「ひろしまハウス展」が開かれますが、今その準備に追われています。その展覧会のプレビューを四月二日より、私の家の建設現場で行ないます。世田谷村と名付けた現場にビニールハウスを設置して、そこで展示物の製作をしたり、トマトを育てたり、ついでに学生も育てようという算段です。ビニールハウスなら育ちも早かろうの苦肉の策でもあります。是非いらして下さい。会場は新宿から京王線十五分、千歳烏山下車、徒歩五分の場所です。住所は世田谷区南烏山二ノ十六ノ四、烏山神社の南で、工事中の現場と廃屋とビニールハウスがありますから、すぐわかる筈です。

建築家としての私は今、宮城県鳴子町に「早稲田湯劇場」を建設中です。鳴子はこけしで名高いところですが、新しく凄いものを作り出しました。地元の菊地武信さんたちが東北大学農学部の三枝正彦教授の指導を得てつくりだした「ツクネイモ」です。鳴子温泉神社ゆかりの「とろろ精進講」を縁起にした凄いイモです。
「ツクネイモ」よりも「スゴイモノ」と呼びたいくらいの味、香り、舌ざわりを持っています。その凄味は多意を要しません。是非ともお試し下さい。雪国に咲く水仙の姿が口の中、五臓六腑にしみわたります。滋養強壮の食物として珍重され続けてきたものですが、マ、その中でも随一でしょうな。お買い求め下さい。
その鳴子町は漆器作りでも有名な町です。友人の塗師後藤常夫の四寸碗をお分けします。この人物の手には東北の土の匂いがしみついています。がその朴訥な手がナント洗練の極みとも呼ぶべき軽みと精妙さを生み出すのです。凍土の中の華とでも呼びたい代物です。この四寸碗でツクネイモのおろしたのを食べたとします。‥‥‥‥‥。言葉になりません。絶句です。長生きするぞの実感が湧きます。

宮崎市の藤野カオリさんとその手作りの餡を御紹介します。
宮崎市の中心部を流れる大淀川河畔に、昔、割烹旅館「紫明館」がありました。料理の腕をふるっていたのが「吉岡金弥」。その金弥じいさんのあんころもちを食べながら育った孫が藤野カオリさん。カオリさんの舌はその味を決して忘れませんでした。味には揺るぎない歴史があるようです。カオリさんはその味を遂に再現しました。それがキンヤの餡です。ゆっくり味わって下さい。南の国の日だまりの味がします。ひと時、辛さや退屈さを忘れることができるでしょう。
支援センターではカオリさんと共に頭をひねりました。そして黒餡、白餡、季節の餡の三点セットを皆さんに送り出せるようになりました。お試し下さい。

新宿区大久保、明治通りと諏訪通りの交差点近くにインド式カレーの店「夢民(むーみん)」の新しい店ができました。支援センターで店作りのお手伝いをしました。味はスデに定評のあるもので、一部の人には無くてはならぬ味でした。新しく大きくなった店にもお立ち寄り下さい。まちづくり支援センターの各種多様な情報も掲示されています。

一九九八年 春 まちづくり支援センター 石山修武


ご挨拶・十三|ご挨拶・十五

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