DAILY NEWS WASEDA BAUHAUS SCHOOL in SAGA

3月18日土曜日

演習課題、個別に決定される

キャリアに応じ、多様に出題

今期の最終講評会までのメイン課題が昨17日14時より、各参加者の意向や職歴、適性などに応じて決定された。初心者には建築設計の基礎的トレーニングとなる「母の家」が課され、実務者は与件がより複雑でかつ地域の固有性への対応が求められる住宅や集落、再生計画に取り組むことが推奨された。
また同日講義された入江正之、森正洋両先生も幾人かの参加者の個別な相談に応じておられた。

寄稿:ここでは理念を教えている
─神戸幸夫(フリーライター)

 ある雑誌に「石山修武研究室」という記事を連載しているフリーライターです。連載は石山先生を中心にして、研究室のスタッフや学生、それを取り巻く人などに取材して構成しています。一年半前にはじまり、いまもつづいております。
 その関係で、「早稲田バウハウス・スクールin佐賀」(以下ワークショップ)を三月一六・一七日の両日見学させていただきました。
 このワークショップは旧「職人・芸術・建築大学ワークショップ」のころに、何回か取材しております。そして、ここを受講して人生観を変えるに至った人も何人かいて、そうした人に取材したこともあります。
 ワークショップの真骨頂は講評会にあると思っており、今回も講評会の日を選んで見学させてもらいました。一六日の午後三時から深夜一時に及ぶ講評会は、なかなかエキサイティングでした。私は建築にはまったく素人の人間です。それが、一○時間にもわたる講評会を飽かずに見られたのは、その内容が単にデザインの巧拙にとどまらずに、人間性にまで踏み込んで論評されているからだと思います。
 初めて受講された方々には驚かれた方もいるでしょうが、今後、中間講評会、最終講評会と進むにつれ、受講者の人柄も分かってきて、さらに踏み込んだ講評がなされるはずです。貴重な体験になるのではないでしょうか。
 さて、ワークショップを幾度かけんがくして、そのたびに感動させられるのですが、それはここにあるのが、教える者と学ぶ者の二者の関係だけのプリミティブなものだからのようです。教える側を縛るシステムは何もありません。学ぶ側にも、性別、年齢、学歴、社会的肩書き等の一切を問いません。あるのは、双方の熱い意欲だけ。
 これはもう、昔の”私塾”といっていいのではないでしょうか。人格者の許に、意欲のある人々が集まって教えを乞う私塾。ここが、私塾であれが、教えられているのは技術ではなくて”理念”のはずです。理念であるから、あるから、カテゴリーを越えた多様な人々を集めて教えることができるのです。教えられるほうも、それぞれのレベルで受容できるのです。
 ときには、それが魂までをも揺さぶって、人生観を変えるに至る人までが現れるというのは、そういうことなのでしょう。
 初めて受講されたみなさんは、けっして高蔓なものではなくても、何かひとての理念を感じ取って帰ってほしいと思います。このワークショップはそれが与えられる場でもあります。

寄稿:フランスの学生事情
─森山一敏(建築家)(前号からの続き)

 地続きのヨーロッパだから、EU統合以前からフランスの大学には外国人の学生が多くいる。また教師側にもフランスに帰化した人も含めて常勤あるいは客員という形の外国人がある一定数で加わっている。建築は言語の差を超えた、ある種の普遍性を持つ側面と同時に文化的な固有性を混入させた現代性を反映しているのであろうか。実際フランスには数多くの外国人建築家が働いている。外国で仕事をしている者も多い。これはかつての植民地時代から、潜在的にフランスの示す異文化を吸収しながら自らのアイデンティティを高めていく能力のある国の独自性かもしれない。
 最後にこのことをフランス的と言えるのかどうか、最近とくに女子大生が多いことである。一般的には六八年の改革に前後した時期のフェミニズム運動が、従来男性が支配的であった職種にも女性が進出する動きを推進させた。現在でも、世の中の半分は女性、そこで議員の半分は女性にすべきという案が出されているフランスのこと、注目すべき性差(ジェンダー)という、視点であると思われる。事実上、一部の現場作業を除いて建築の分野において男女の能力差を見出すことは不可能である。むしろ女性が参画することによって異なった視点から、建築の見直しという現状打破に向けた積極的な側面も評価できるはずである。
 私自身の一五年に渡るフランス滞在を基に、建築教育と実践の乖離、国際化と固有性、そして性差という三つの視点から手短く報告いたしました。

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