ゼロ・プロジェクト
世田谷村の第一期工事が終了してから早一年が過ぎようとしております。
第二期工事は、一階の解体した母屋の跡地に最小限シェルターを予定しております。最小限シェルターとは、一人暮らし用の木造小屋・ソーラーパネル・トイレ・シャワーです。それらは、20フィート(W 2340 / H 2380 / D 5890)のコンテナの中に収納可能で、世界中どこにでも設置可能なものです。当然、電気はソーラーパネルによる自家発電、水は雨水利用を予定しております。また小屋の材料費に関しても極力¥ゼロを目指しております。

そこで、建築解体業者や引っ越し屋などの皆さん、建築・家具を含めて普段ゴミ扱いしているものをお譲りください。

興味がある方・詳細情報を知りたい方は、下記まで御連絡下さい。よろしくお願いします。
世田谷村 tel: 03-5315-7178 fax: 03-5315-7177
e-mail: ishiyamalab@ishiyama.arch.waseda.ac.jpまで

完全ゼロハウス
STUDIO VOICE 2001年5月号セルフビルド自分で家を建てるということ第五回
 ゼロハウス  ゼロハウス

 0計画(ゼロ・プロジェクトと)名付けた思い付きを進めている。思い付きにしては我ながら執拗である。いずれ御紹介するが「世田谷村」と呼んでいる私の家が建設中で、これが0計画の第一号、次いでアポロ計画と同様に二号、三号と打ち続けているのではなく、計画自体を煮つめつつある。夢物語ではない。全て実在の依頼者付きのスーパーリアルな現在進行形の計画である。
 0とは何を意味するのか。もちろんナッシング。何もない状態を目指そうということ。建築を、特に住宅を限り無く0の状態に近付けようと試みてみる。そんな計画である。物体を完全に0にすることはできないから、できることから試みようとしている。先ず第一にエネルギー消費を0に近付けよう。これは意外に簡単そうで、自然エネルギーの利用を徹底的に試みることで実現可能だ。太陽光発電、小型換気扇型風力発電機、井戸水ヒートポンプ、地下冷気利用冷房などの併用で、都市生活に必要なエネルギーは全て自然の力を高度に使用することで可能だ。第二にゴミ0状態の実現。つまり生活することによって排泄物のように出現してしまうあらゆるタイプのゴミを0にしようとする。これはエネルギー問題よりも困難だ。屋上に都市菜園を作って、コンポストに余ってしまった食物を捨てる等の努力をしてみても、私達の生活は凄まじいまでのゴミを生産し続けるスタイルの中に幽閉されている。人体自体が排泄物を排出する力によって生きている様なところがあるから、この問題の根は深いのだ。しかしながら解決不能な問題であるとは考えられない。
 ところがここに第三の問題が立ち塞がる。0計画最大の難問であり、私自身の実験ハウスでは遂に解答不能であった大問題だ。お金ゼロの家作りという大命題である。限り無くタダに近い家作りはあり得るのかというビジョン。あんなところまで出掛けなくっても良かったのじゃないかの人類月面歩行計画、アポロ計画なんかよりもはるかに高度なビジョンが作り出してしまう難問中の難問である。
 誰もが実は、心密かに秘めている夢想、口に出すのもはばかれる欲望。自分の家を0円で手に入れたい。そこまで欲深くなくとも、無茶苦茶安く、ほとんど0に近い金で家を入手したい、部屋をもちたい。これは誰もが、特に日本人だったら一度や、二度三度四度毎日と見続けている、つまり私達がほとんど忘れてしまってドブ川に捨ててしまった“理想”の中の理想、理想の金字塔のようなものだ。これは私の実験ハウスでも試みてはいるが、実に困難な問題なのだった。しかしながら、0計画の突極、つまり、目指すべき最高峰はこの問題をおいて他にはないことも歴然としている。しかしながら、仲々に思考モデルさえ思い付かないままに無為の時を過してきた。ところが、やはりどうして、こんなしんどい御時世でも、あるいはそれだからこそ、救世主は現れるものだ。しかも救世主らしからぬ姿格好をして、その人物は出現した。完全0円の家に住みながらである。御本人はすでに自らの名を忘れたという。そんなものあったっけなんていうので、人物の名は仮に長明さんとする。長明さんの家、完全0ハウスは隅田川べりにひっそりと浮いている。何故浮いているとわざわざ言うか、この家は数年前の隅田川大増水の時には本当にブカリブカリと水に浮いたからだ。最小限住宅を超えた、ミニマムノアの方舟なのであーる。写真で御覧の通り、誠に涼し気で、キレイサビな姿形をしている。利休、織部、遠州もフッ飛んでしまう軽みの極。デザインなんてしゃらくさい域を超えた、人生の軽みを実現する道具なのである。長明さんの家は事情があって月に一度撤去しなければならない。引っ越しが義務づけられている。だからその家は徹底的に軽く考え抜かれている。阿呆な私が挨拶代わりにと差し出した名刺だって勿論受け取らない。「軽く、軽く、軽く」なんである。ソーラー電池も軽い。出力7ワット。これで充分なんだそうだ。十二Vの自動車TVが晴れた日には二時間も楽しめると言う。
 この家に関しては一冊の分厚い書物を作っても書き切れぬ。それ故にこれ以上は書かぬ。しかし、私は果報にも、長明さんから設計を依頼されてしまったのである。このオリジナル長明バージョンをいささか改良したものを長明さんに教わりながら設計中である。その設計図をガイドブックにして長明さんのように都市にあり余る程に溢れている余剰物、つまりゴミを集めて、自分で組み立てると、本当に0円の家が作れるのだ。設計図が出来上がったら長明さんの許しを得て、皆さんにお分けしたい。突極の0ハウスになる。
 

世田谷村

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