制作ノート 3 | |
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石山修武研究室 | |
研究室 制作ノート004 | |
「鳥」について再び考える 渡辺大志
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この神秘的な金色の鳥は、時もつくらず、羽ばたきもせず、自分が鳥であることを忘れてしまっているに違いなかった。しかしそれが飛ばないように見えるのはまちがいだ。他の鳥が空間を飛ぶのに、この金の鳳凰はかがやく翼をあげて、永遠に、時間のなかを飛んでいるのだ。時間がその翼を打つ。翼を打って、後方に流れてゆく。飛んでいるためには、鳳凰はただ不動の姿で、眼を怒らせ、翼を高くかかげ、尾羽根をひるがえし、いかめしい金いろの双の脚を、しっかりと踏んばっていればよかったのだ。(三島由紀夫『金閣寺』) | |
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研究室 制作ノート003 | |
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照明器具から始まった竹の造形 渡辺大志
竹を並べたテンポラリーな美術館である。竹の特性はしなるということだ。つまり動くことで構造を成立させていることにある。このことは実は建部町の仕事のときから考えられていたが、そのときはまだ人間の知覚との結びつきが意識的には表現されていなかった。O邸でそれを少し展開させた。張力を加えられた竹がしなり、それを介して光が落ちる。その光というメディアを知覚することで、竹の持つ構造はその照明が置かれた空間の構造となることができた。 | |
研究室 制作ノート002 | |
ハイテク時代の建築技術について 渡辺大志
テレビコマーシャルを見ていてもペットボトルから何からもはや建前としてのエコは当たり前の時代だ。特に自動車の世界では、前回の東京モーターショーのテーマは「エコ+α」であったし、6月に横浜でもエコカーワールド2006という展示会が行われたばかりだ。例えばトヨタではダイナ、プリウス等のハイブリッドカーを始めとしてマークィやセンチュリーなどの歴代のヒット商品も政府グリーン調達適合車となっており、日本全体でも2010年には現在普及している総自動車数7000万台のうち1000万台をエコカーが占めると予測されている。それに対して住宅産業では太陽光発電住宅の普及率は全国の住宅件数2000万件に対して30万件程度である。 ※1 石山修武 | |
研究室 制作ノート001 | |
かたちを創る技術 渡辺大志
鬼沼計画ではライフスタイルのデザインが主眼となっている。ここでデザインされる建築を含めた全ての要素はそのためのマテリアルである。一枚の布を使ったささやかな集水装置もまた飲み水を自給自足するというライフスタイルのデザインに他ならないが、かたちを伴うものはどの様なものでも視覚的デザインが発生するため、一般的にはデザインする者の恣意性が介入する。その恣意性をどうやって普遍性へと高めていくのかにかたちを決定する意志が働く。 |
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ハンス・ホラインは1976年の「MantransForms展」で一枚の布に人間の知恵や歴史(文化)が加えられることであらゆるかたちが立ち現れることを示した。そこには人間の歴史自身に対するアニミズムがあり、それがかたちを誕生させた。当然ながら建築は土地の上に建てられる。それ故にデザインはその歴史の文脈をどのように読み取るのか、つまり「how to read this land」ということを視覚的情報において示すことでもある。
アニミズムという点で最も強くかたちに現れたのはひろしまハウスの屋根である。仏足の上に屋根を載せることになったのは、ここが小乗仏教の総本山の寺院の境内であるからに他ならない。そして屋根を載せるということは僧院の単なる建築様式の問題ではなく、屋根に付けられるナーガという水の神様を祭る事を意味しているのである。雨季になると未だにこの地に生きるナーガの力をまざまざと見せつけられる。そのかたちは自在である。 |
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「観音寺」ではかつてそこに水が流れていたという歴史が一枚の面(土地)を歪ませ、その水の流れが屋根となり、その下に水中の空間というヴァーチャリティを成立させた。「富士ケ嶺観音堂」においても天水を屋根一面で受け止め、それを貯水タンクへと導き、利用している。その貯水タンクを基礎として屋根との間に挟まれた空間は、要するに水によって挟まれているのであり、それ故に空間は地面から浮遊している。これらのかたちは水に対する一種のアニミズムによって普遍化されているわけである。 |
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「O-邸」では水は太陽へと変わる。この土地において最適なソーラーパネルの角度と必要な面積を確保する為には片流れの屋根ではない複雑な形状が求められ、一枚の面がまたしても歪められた。こうして視覚化されたのは、水や太陽によって加えられた力であり、その力を信じようとするアニミズムに対して、現代の技術というもう一つのベクトルによって具象化されたかたちである。もちろん、現在においてほとんどのアニミズムは崩壊過程にある。しかしコペルニクス以降その崩壊を証明してみせた科学や技術もまた、デザインを普遍化しようとする過程でアニミズムを必要としている。
鬼沼の一枚の布はそうした背景の上に敷かれており、それ故に我々はただ自分で現場に貯水用のシートを設置するだけのことを開放系技術と呼ぶのである。 |
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研究室 制作ノート | |
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