新 制作ノート トップページストーリー
石山修武研究室
NOTE

01 VOID 光の移ろいの中に時間があるだけ=時間の倉庫

Only time inside transient light : the Time Storage

02 SPACE 人間が入る。そこに SPACE が出現する。SPACE は常に人と共に動いている。

as someone enters the void SPACE emerges there, which moves along with him/her.

03 人が動くのを視る、そして知覚する。その動く姿は人間の想像力を覚醒させるだろう。そう願う。そのとき一瞬、更に明白な時空のステージになる。体験者は建築が近代的機能を超える力を持つことを実感する。そうであって欲しい。

ヴィジュアル・マテリアルは九月二十八日鬼沼「時の谷」、竣工間近の「時間の倉庫」内部の写真一葉。選択の基準は現ページのコンセプトモデルに最も適う一様とする。

土地の諸条件、社会的要因から考え、時の谷の中心建築は「時間の倉庫」と命名した。

時間の倉庫の命名に加速されて、この立体の基本的性格に力が与えられる。

無限運動、螺旋、降下、上昇という諸運動のイメージ。

施行中の「時間の倉庫」にはその性格が良く表現されている。

立体(建築)の大半は地中に埋設される。それ故、光は直方体の北面を除く三面、東西南では全て上から差し込む。北面の安定した光は、全面地上に露出しているので、かなり下の迄開口が得られている。

主役として、しつらえられた螺旋スロープを人間は降下し、再び上昇する。その運動を朝昼夕の陽光、夜の月光、星光の回転運動がここで合体している。

その光と人間の運動を最も良く表現していると思われる写真を選択する。

降下、上昇、回転する人間と光。

和文キャプションは「時間の倉庫の内部」のみで良し。英文も同様。

実物ができ上る過程で次第に実物の力が、言葉を凌駕し始めます。

デザイン、施工、共に上手くいったものは、の話しですが。

追 スケール感が伝達しやすいので人間が入っていても一向に構わない。入っていなくても構わない。共に大丈夫です。

さて、場所の把握ができました。時の谷と言う命名にはすでに作る(設計する)主体の意志が入っています。

次に建築という立体デザインに進みます。デザインの実際はここに記しているように順を追って、理路整然として行われるものではありません。良く出来たなと自分でも満足なモノは時に、考える順序も何もなしに、生まれてくるアイデアらしきが棲み込んで、どうにも、そいつがテコでも動かない様な場合に、できてしまうような事が多い。

逆に、そのような強いアイデアが生まれぬ時の苦労は大変なモノであるのです。

ここに紹介しているケースでは、ほぼ構想がまとまり、現場の工事も始まってから、この建築のイメージ・モデルが生まれました。このモデルがあって、建築の細部が決められたわけではない。

時に設計が終わりかかり、恐らく、これは良いモノになるだろうと自分でも考えているような時でも、何故なんだろう、何故か?と自分で自分に問い続ける事があります。

ある種、途方も無いと自覚するようなモノを作る時に、それは起こります。

この建築・立体のケースもそうです。だからこそ、これはもしかしたら、重要な事をやっているのかも知れぬと、自覚するからこそ皆さんに公開する意味もある。それでなければ、公開しません。

この場所を「時の谷」と命名しました。そして、そこに作る立体は「時間の倉庫」とします。良い名前です。

このモデルが「時間の倉庫」の、「時の谷」の内に建てるべき、理想のモデルです。

しかし、建築という現実は、理想からの退却の方法から立ち上がってくるモノです。予算や、法規や、何やかやにもみくちゃにされるモノなのです。

あんまり、過度に退却し過ぎぬように、このモデルはあるのかもしれない。あるいは、次の機会を待ち構える、忍耐のためにあるのかも知れない。

私にとっては、実際に出来上がる建築と同じ位に、時にはより大事なモデルであるやも知れない。

左下のキャプションは「時間の倉庫」

与えられた、あるいは自らすすんでそこに何かを作ろうと考えた土地に名を与える。そこ迄辿り着きました。

この第一のケーススタディは福島県猪苗代湖畔の 45ha の山林が与えられた土地でした。この土地に何を作ろうとするのか、が先ず問題でしたが、依頼主の事業力、ヴィジョンとの折り合いも当然私達の計画に色濃く反映します。ここで言う私達とは依頼主も含めた私達であり、福島県、郡山市も含めた社会をも含みますが、ここでは省略します。

先ず作る、デザインする主体としての私に焦点を当てましょう。作りたくなければ、デザインしたくなければ、全く事は何も始まらないのですから。

ある一つの場所、ここではそれは谷状の場所でした。

この 45ha の土地に何年も通い、身体感覚をできるだけ土地全体に拡張する努力をした末に、私達はこの小さな谷に白羽の矢を立てました。ある重要な建築はこの場所が建てるに良いと決めました。この土地にまだ道もつけられていなかった、建設の始まりの頃には、入り込む事さえ出来なかった土地です。

足を運べば運ぶ程に、この谷の独自性を深く理解するようになりました。建築をここに作らなくても、この谷には独特の外部であり同時に内部でもあるような、大きな空間が在る事に気附いたのです。あんまり劇的では無く、時が経つ程に知覚にしみ込んでくる類の独特な性格でした。ゆるやかに、断面図的に土地を切断してみると、明らかに凹型の空間がすでにそこに在ったのです。

それが 1-03 に示す、イメージとしてのこの谷の性格、スケール観らしきもののスケッチです。

しかも、時の谷という命名がありますから、この谷に作られるべき立体(建築)の骨格がすでに描かれています。ここ迄くると作るべきモノのデザインは加速度をつけて進みます。

TOPページのヴィジュアルは、私のスケッチと、時の谷のまだ工事に入る前の写真がある筈で、その二つを ON しましょう。できれば猪苗代湖に開かれた写真ではなく、反対の屋根にレンズを向けたものが望ましい。

この時の谷の写真は、これからも度々、使う事になりますのでデータ整理しておいた方が良いでしょう。

1-03 の左下のキャプションは、命名と同時の視覚的把握としたいが、長過ぎるから「命名=デザイン」としましょう。

当然の事ながら命名する事の中にデザインが入っています。

1-06 改め 1-01、命名地図の一点に新しい名を与える。そして、実利的に名を付与してきたモノも並列する。

計画の始まりに、何よりも飲み水が必要だと、小さなシートで水たまりを作った。その、実ワ計画にとって記念碑的な場所は、ワンシート・ポンドと名付けた。その計画はワンシート・プロジェクトと命名されていた。

計画地全体の建設作業、農園、果樹園づくりの作業小屋は「前進基地」と名付けられた。江湖窯と名付けられた炭焼き窯、および小屋のポイントは江湖ガマ、と名付けられた。

ただ、それらはあく迄準備段階、あるいは事後につけられた名前でもあった。計画自体をデザインする、そして方向づけるネーミングではなかった。

このフィールドでの全ての計画自体に軸、つまり方向性を持たらせるポイント、モデルの命名が必要になった。

重要な建築を建設する谷への命名が次の段階へと計画を運び上げるに必要となった。

その、小さな谷を、

「時の谷」と命名した。

それが、バラバラになりかねぬ、自然なカオス、そして我々の意識、意図、思考、デザインのはじまりである。率直に言い直すならば、はじまりでありたいと考えたのである。

1-01、命名地図の一点に、時の谷と刻印して下さい。それを1-02とする。

左下には、「一つの特異点を作り出す。そこに『時の谷』と命名する」とします。

トップページを動かします。0-05 をのぞいて、他はページから消して下さい。ただし、メモリーは保管して下さい。アニミズム紀行に再編集して使いますから。読者に対しては 0-01 - 0-04 まではもう読めなくします。

1-06 は初めて具体世界を仲介にします。少しわかりやすくなる筈です。

昨年、二〇〇八年三月八日付のドローイングをフィールドとして使う。

「命名地図 鬼沼」と右下に書き込まれているモノです。

沢山の生物の軌跡、空の航路の網の目にSITEは出現する、というインスピレーションも描き込まれています。

もうちょっとくだいて言うと、沢山の生物の軌跡とは人間の歴史と共に、熊やたぬきやゲジゲジやメメズの生息という事です。空の航路とは鳥の眼に写る世界です。

これ以上の説明は、このドローイングに表現したニュアンスを眼で理解していただいた方が良い。

0-05 で世界は不可視な、つまりカオスにもどった、という考えが示されている。超高度情報資本主義は、乳海の如きの、あるいは天と地が不分明な状態のカオスに近いという考えです。

その事をここではそれ以上深くは考えますまい。何故なら私はつきつめるところ作家、モノ作る人です。認識する人、理解する人の明晰さの中にだけ棲み続けるわけにはゆかない。

作る事の中心は、名付ける事です。特に私の仕事の多くは、その土地土地の性格に多く規制され、又同時に自由を確保させられます。

1-06 のドローイング。注意して下さい。章立てが変っています。1-06 のドローイングは 0-05 の一見のカオス状態を、一つの土地に視た。つまり 0-05 を現実界に変換したものに過ぎません。

ですから、左下の重要なキャプションは「 0-05 を現実界に転換します。現実の何処も、このドローイング状の世界です」

とします。少し長いけれども、これは仕方ありません。

更に言えば、世界はデザインを持って、こんな状態にあるとも言えるでしょう。

心配しないでよろしい。神秘主義の独善に落ち込む事はないから。

その為のアニミズム紀行、つまり旅なのですから。

トップページの図像です。大円エンジニアのフィールドの中に沢山の 0-04 に描いた図像を縮小して埋め尽して下さい。エンジニアのフィールドの大円は地球のメタファーでもあります。縮小した 0-04 図像の配置はランダムに点在させるゾーンと均質に配列するゾーンのほぼ二種類にして下さい。ほぼとわざわざ言うのはその中間のゾーンがあるだろうとの考えを示しています。

次の 0-06 の図像は、0-05 までの観念的な抽象性を切り替えて、昨年の世田谷美術館の展覧会に出展した「命名の地図」、鬼沼を想定した、場所やモノに命名する事の重要なデザイン性を示したものがありますが、それを提示します。白地に記号のカオス状態が描き込まれたものです。

この図像はトップページの図像の体系化らしきを試みる以前に、ただただグラフィカルに美しいだろう位の感じで石山研のサイトにチョイ出ししたから、データはすでにあるでしょう。この図像を見て、次の図像はこれかと、一応頭に入れておくと作業が少しは面白くなる筈です。

0-04 が無数に、それこそ際限も無く拡がっているのが社会です。現実のフィールドです。

0-05 の左下のキャプションンは

「現実というフィルドは 0-04 のエンドレスな散在である。世界は不可視になる」

としましょう。

他は不要です。

トップページのための制作ノートは「アニミズム周辺紀行」に、トップページストーリーとして再録される予定です

OSAMU ISHIYAMA LABORATORY (C) Osamu Ishiyama Laboratory , 1996-2009 all rights reserved