絶版書房通信 2011年の9
お待たせしました。「アニムズム周辺紀行6」をお届けしたい。これ迄の旅の過程では我ながら解りやすく、かゆいところ迄手を差し伸べて書いている。読者諸兄姉に於かれても、ようやくにして、どうやらこんな事を考えているのかの外形は視えてくるモノと考える。
千年に一度とも言われる東北・東日本大震災、大津波、そして福島第一原子力発電所事故の連鎖が収策せぬ時期の出刊である。
この黙示録的出来事に際して、いかなる創作論があり得るのか、恐らくは万を越える死者の尊厳に対しても恥ずべきモノにならぬと、そしてある意味では鎮魂の仕事としてもかなうモノを送り出す覚悟である。是非共御一読願いたい。
「アニムズム紀行6」は「アニミズム紀行5」と対の形式を持つように考案されています。旅行記という基本と骨組みとして持たせているので、それは必然でもありましょう。前号を踏まえた展開という連続にならざるを得ないのです。
そうは言ってもモノ事は理屈通りには進まぬのが道理です。こんなタンカはアニミズム紀行6号を作り上げて、ようやく切れるようになったのです。解りやすく言えば「アニミズム紀行6」の中には、5号に登場した未来のわたしの終の棲家の模型写真やら簡単な平面図まで記録されている。アニミズム紀行5に於いて言葉のみで表現しようとしたモノが直載な形にもなっているのです。全体の構成は以下の通り。
「アニミズム紀行6」
開放系デザイン、技術ノート II
創作論ー作る者の内の場所・時間を動いてみる
目次
カメレオンの必然的多様 9 立ち読みする (pdf)
擬洋風建築と安土桃山建築の血はつながるのか 13
神社の現在、精霊の場所 25
大猷院精霊たちの館 37
江戸のアニミズム建築 栄螺堂 49
キルティプール終の棲家1 57
キルティプール終の棲家2 71
ピンホール計画 79
スケールのハードル 87
サティアンの廃墟に建てる富士ケ嶺観音堂 95
気持の避難所としての建築 105
開放系デザイン 111
開放系技術 119
創作のためのメモ 129
「アニミズム紀行5」はまだ残部が100冊程あります。近いうちに残部を公表します。まだ手にされてない方は「アニミズム紀行6」と二冊合わせて御購読いただきたい。ただし、二冊合わせての割引き等は一切いたしません。それは絶版書房の存在理由にかかわります。
そりゃ、余りにも素気無いだろう、少しは二冊合わせて値引きしろと言う、今の消費社会の慣例に慣れた方々へわたしたちのカタクナさを保持するために(少しは気にしているのです)仕方ない。エイ、かねてより多くの要望が寄せられていました、小さな差し込みのオリジナルドローイングを一点付け加えます。5号6号2冊を求める方にだけ、そうします。
本に描き込むドローイングよりも独立したモノの方が良いのではないかの声もあったので、本に描き込むドローイングは続行させてもらいますが、別に本と分離独立したモノを製作して付け加えます。
2011年3月22日 石山修武