絶版書房便り<1>
通信と呼ぶのは冥界通信を思わせていささかたそがれの灰色めいて遠慮したい。反対に便りというのもウィリアム・モリスのユートピア便りを思わせるが、灰色の世界よりは一条の光が差し込むようで恥ずかしいが、恥をしのべばまあまあなのではないか。
過日研究室OBの倉本琢くんから便りが届いた。鎌倉で古道具屋を開店したとの知らせだった。設計事務所運営のかたわら店を出したようだ。
わたくしには根深い雑貨商願望がある。一冊の本まで出した。『建築家、突如雑貨商となり至極満足に生きる』デジタルハリウッド出版局、である。まちづくり支援センターを名乗り伊豆・松崎町のオリーブ茶などを売りさばいた事等の一種の記録である。一部に大変喜ばれた。喜んでくれた人はみな品格大いに溢れる人達であったが、大方には評判にもならず、鳴かず飛ばずではあった。空を切る空振りは妙に懐かしく、それ以上に哀惜の念がある。倉本くんにだけ名を成さしめるのは無念でもある。それで雑貨商ならぬオンラインマーケットを開店することにした。
英語まがいで呼べばONLINE MARKET。正しい日本語で、これも中国文字まがいではあるが、露天商である。ONライン、要するに露店である。
2008年に東京・世田谷美術館で個展を持った。その後ほぼ同様の出展物がドイツ・ワイマール、バウハウス大学、ルーフライトギャラーに展示された。その後、シュツットガルト芸術アカデミーに巡回した。その先の行方は知らぬ。
それで、今はコンピューター万能の時代であると気付いた。万能は万能貼り薬程度の万能であるが、無能よりは有難い。それでコンピューターのサイト上にギャラリーを開設した。いろいろと工夫をこらし、今現在はわたし共のサイトでキルティプール・ギャラリーとして厳然として存在する。厳然たる架空である。
その為に随分ドローイングを描きためた。
わたくしの手描きのモノを若い五月女くんが工夫してサイト上に美術館を開設した。これは昔、チョッと試みて挫折した西伊豆・松崎町での「電脳美術館」の続編でもある。松崎町といっても知る人は少ないだろうが、わたくしにとっては大事なところだが、それはさて置く。
アレヤ、コレヤの工夫が積み重なり、それがようやく、キルティプール・ギャラリーとなった。
けれどウェブサイトには浮かんだが、手許にはドローイングのオリジナル、原画が残るばかりである。一生懸命に描いたモノだからポイと捨てるにはしのび無いのである。それで極く極く自然に、苦しまぎれでもあるけれど、売ろうとなった。マ、この辺りの理屈は言わぬが華であろう。
絶版書房の由緒は重版せずに在る。一冊一冊の書物が実ワ、皆違う。手描きのドローイングを描き込んでいるからだ。だから、コノ試みは絶版書房、露天部門のものだと考えてくだされば良い。
従来通り、アニミズム紀行シリーズは続行する。つけ加えればアニミズム紀行5とキルティプール・ギャラリーは完全に連結している。
それぞれのドローイングは当然の事ながら一品限りである。作品毎の値段を次に挙げる。
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