星の子愛児園の増築計画について02
星の子愛児園増築計画(2013-)の第一次案は、先に述べた通り二つの異なる質を持つ造形の組み合わせでまとめることを試みたものであった。保育園にとって非常に重要である園庭を最大限に確保するために、保育室その他の機能諸室を上階に上げ、既存の園舎の上に被さる形で片持ちの構造を採用している。子どもたちの遊び場でもある地上の園庭に近い部分には有機的な表情と造形を持って上昇する半屋外階段を配置している。螺旋状に上がっていくその階段をカンボジア産のレンガが覆っている。子どもたちおよび保育に携わる大人が直に触れるであろう階段の手すりと、階段自体の造形を一体のものにしようという意識がある。一つのいきものの如く、グネグネと上がってゆく階段の中を子どもたちが通り抜け、あるいはその姿をまたべつの子どもたちが眺め見て、まだ幼い彼らの記憶の何処かにその驚きと楽しみの経験を刻み込むことができれば、などという一つの夢想があった。ただし、その夢想が直接的かつ単一の造形によって表現され、造形的明快さもまた持ってしまったことに一つの限界があったのやもしれない。
そこで第二次案においては、第一次案で考えられようとしていた子どもたち(もちろん大人たちも)の身体体験、および知覚経験を一つの基軸としたデザインをより深化させようとしている。この建築内の保育室に入るのがまだ歩行することもままならない0-2歳程の乳児でもあることから、特に彼らの知覚に対するデザインのアプローチを検討している。つまり、2002年に建てられた既存の園舎から2013年の第一次案を経て、デザインの主眼が外部の造形からより内部の微細なモノへの傾注へと遷移しつつある、と自らのデザイン検討の方向性を見出すこともできるだろう。
2013年9月18日
佐藤研吾