カバーコラム 石山修武
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松崎町ストリートミュージアム

145 松崎町ストリートミュージアム

 これ迄陽の目を見なかったプロジェクトが何かのきっかけで息を吹き返す事がある。自分でも走り過ぎたなと考えていた唐桑計画や松崎ストリートミュージアム計画が別のところで再浮上しそうだ。
 この二つの計画は横浜グランモール計画と共に実現をまっとうしたかったが、天に見放されていた。丁度、時代が良い巡り合わせになってきて、何とかもう少しまっとうな形でまとめられるかも知れぬ。これら一群のプロジェクトは建築というハードな枠を持たざるを得ぬ世界を越境する趣向を持っていた。どのように越境しようとしていたかも、今では少し明快に自覚できるようになった。
 地球上の一点としか言いようのないポイントの再構成が我々の仕事だ。その再構成の方法には今在る、これ迄もあった様相を少し計り作り直し、耕すといった事と同時に、そのポジションにしか産み出せぬ固有の物語り=歴史をつむぎ出す事もある。固有のフィールドを持つ物語り=歴史作りでもある。文学的空間は一方的なオリエンテーションしか持たぬが、我々にはフィールドがあり、これが最大級の道具にもなる。大きなフィールドには沢山の物語り=コミュニケーションの姿が生まれる可能性があるし、小さな数Fのフィールドだって、地球の表面を占有するのには違いない。それ故、それがそのポジションの質を充二分に深める事ができれば、世界に固有のポジションを再構成する事ができる。あらゆる位置(場所)にはその固有性がある。そのポジションしか持ち得ぬ力が、物理的にも、歴史的にも在る。何よりも、歴史的な意味も含めて地勢的な固有性がすでに在る。そのすでに在る固有性を深化させるのが建築デザインの固有な力である。
 石山修武

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